弓を買おうと調べ始めると、値段の幅の広さに戸惑うと思います。同じ「和弓」という名前で売られているのに、価格が一桁違うことがあるからです。
これは品質のばらつきではなく、素材が違えば別の製品だからです。値段の話をする前に、まず何が分かれているのかを押さえると、自分に必要なものがどのあたりなのかが見えてきます。
値段が分かれる最大の要因は「素材」
和弓は、大きく3種類に分かれます。価格帯もこの順に上がります。
| 素材 | 中身 | 扱いやすさ | 価格帯の位置 |
|---|---|---|---|
| グラス弓 | 竹の芯材をグラスファイバーで挟んだもの | 気候の影響を受けにくく、狂いが少ない | 最も手が届きやすい |
| カーボン弓 | 同じ構造でカーボンを使ったもの | 軽く、反発が強い。個体差が小さい | グラスより上 |
| 竹弓 | 竹とハゼの木で作られた伝統的な構造 | 手入れと管理が要る。個体差が大きい | 大きく上がる |
グラスとカーボンは工業製品として作られるため、同じ規格なら同じものが手に入ります。 一方の竹弓は、素材を選び、貼り合わせ、成形するまでを人の手で行うため、一張りずつ違います。値段の差は、この作り方の差そのものです。
素材の中でも値段が動く4つの要素
同じグラス弓でも、価格には幅があります。動かしているのは主に次の4つです。
- 作り手・銘。同じ素材でも、作っている工房によって価格帯が違います
- 弓力(何キロの弓か)。強い弓ほど材の量と手間が増えるため、上がる傾向があります
- 長さ(並寸・伸寸・四寸伸など)。長い規格は価格が上がることがあります
- 仕上げ。塗りの有無、握りの仕様、外観の仕上げ
竹弓ではここに「素材そのものの質」が加わります。 竹の育ち方、節の入り方、ハゼの木目。同じ作り手の同じ規格でも、素材の状態で価格が変わるのが竹弓の特徴です。
弓力と長さの決め方そのものは、値段より先に決まる話です。弓力の目安と並寸・伸寸の違いを先に読んでおくと、価格を見る前に候補が絞れます。
最初の一張りは、「何年使うか」では決まらない
初めて弓を買うときに悩むのが、どこまでお金をかけるかです。ここでよく言われる「長く使えるものを最初に」という考え方は、弓に関してはあまり当てはまりません。
理由は一つで、弓力が変わるからです。
始めたばかりの時期は、引ける強さが変わっていきます。体ができてくると、同じ弓が軽く感じるようになります。弓は、強さを後から変えられません。 つまり最初に選んだ弓力は、遠くない時期に合わなくなる可能性があります。
- 弓力が変わる見込みがある段階 … 高価な弓を選ぶ理由が薄い。買い替えの前提で考えるほうが現実的
- 弓力が落ち着いてきた段階 … ここで初めて、長く付き合う弓を検討する意味が出ます
竹弓は「上手くなったら」ではなく「弓力が安定したら」と考えると、判断がしやすくなります。上達の度合いではなく、体の側の変化が基準です。
弓力の上げ方については弓力を上げていくときの考え方を参照してください。
弓だけでは引けない=合わせて要るもの
値段を考えるとき、弓単体の価格だけを見ると予算が足りなくなります。 弓を引くには、少なくとも次が要ります。
- かけ(弽) … 弓具の中でも扱いが特別で、手に合わせる必要があります
- 弦 … 消耗品です。切れます
- 矢 … 自分の矢尺で作るものです
- 弓袋・弦巻など … 持ち運びと保管に要ります
- 弓道着・袴・足袋 … 稽古の場によって必要になる時期が違います
一式でどのくらいかかるのかは弓道を始めるときの道具一式の費用、道具ごとの値段の考え方は弓道具の値段はどう見るかにまとめています。
とくにかけは、弓より先に必要になることがあります。 弓は道場のものを借りられても、かけは手に合わせるものなので借り続けにくいためです。
中古という選択肢
弓は中古で流通しています。価格を抑える手段としては現実的ですが、素材によって注意点が違います。
- グラス・カーボン … 状態が分かりやすく、比較的判断しやすい
- 竹弓 … 保管状態が寿命を左右します。 反りの状態、張り込みの癖、割れや剥がれの有無を実物で確認する必要があります
写真だけで判断しにくいのが竹弓です。手に取れない状態で買うのは、避けたほうが無難だと思います。中古を見るときの確認点は中古の弓道具を買うときに見る場所にまとめています。
値段以外に効いてくるコスト
購入価格だけを比べていると見落とすのが、買った後にかかるものです。
- 弦は消耗します。 稽古の頻度によって交換の間隔が変わります(弦の選び方)
- 握り革は巻き替えます。(握り革の巻き替え)
- 竹弓は手入れが前提です。 張り込み・保管の環境が要ります
- 持ち運びに弓袋が要ります。(弓の持ち運び方)
グラス弓とカーボン弓は、この維持の手間が少ないことが価格以上の利点になります。稽古の頻度が高い時期ほど、ここが効きます。
よくある質問
Q. 最初からカーボン弓を選ぶのは、ぜいたくですか。 A. そうとは限りません。 軽さと反発の強さが合う人もいます。ただし弓力が変わる時期に買い替える前提は同じなので、そこを踏まえて選ぶことになります。
Q. 竹弓はいつから持つべきですか。 A. 年数ではなく、弓力が落ち着いたかどうかで考えるほうが現実的です。 加えて、保管できる環境と、手入れを教われる人がいるかどうかが実務的な条件になります。指導者に相談してから決めることをおすすめします。
Q. 安い弓は、上達の妨げになりますか。 A. 弓力と長さが自分に合っていることのほうが、価格より影響します。 合わない弓力の高価な弓より、合った弓力の手頃な弓のほうが引けます。
Q. 弓の値段は、どこで確認すればいいですか。 A. 弓具店の価格表と、実際に手に取れる場所での確認が確実です。 同じ銘でも規格によって価格が変わるため、弓力と長さを決めてから問い合わせると話が早くなります。
まとめ
- 和弓の値段は、まずグラス・カーボン・竹の素材で大きく分かれる
- 同じ素材の中では、作り手・弓力・長さ・仕上げが価格を動かす
- 竹弓は素材そのものの状態でも変わる。一張りずつ違うため
- 最初の一張りは、弓力が変わる前提で考えると判断しやすい
- 弓単体では引けない。 かけ・弦・矢・袋まで含めて予算を組む
- 購入価格だけでなく、維持にかかる手間と費用も比べる
弓の値段は、性能の順位ではなく、作り方の違いを映しています。高いほうが当たる、という道具ではありません。
※本記事は一般的な弓具の価格の考え方を整理したものです。実際の価格・規格・在庫は取扱店によって異なります。 購入にあたっては弓具店や指導者にご相談ください。
千歩堂では在庫を持たず、ご注文をいただいてから手配する受注手配でお取り扱いしています。品名が決まっていなくても構いません。弓力(◯kg)・矢尺(◯cm)・かけの手のサイズをお知らせいただければ、手配できるかどうかと金額・送料・納期の目安を2営業日以内にご返信します(この時点で費用は発生しません)。詳しくはご注文についてをご覧ください。