弓を手に入れて最初に困るのが、運ぶことです。並寸で221cm、伸寸なら227cm。傘でも杖でもない長さのものを、日常の移動に持ち出すわけですから、戸惑って当然です。
ここでは、電車・車・徒歩・遠征のそれぞれで、弓を傷めずに運ぶ方法と、弓袋(ゆみぶくろ)を選ぶときに見る寸法をまとめます。
前提:弓が傷むのは「曲げ」と「熱」と「乾湿」
運び方の話に入る前に、何が弓を傷めるのかを押さえておくと、その場その場で判断できるようになります。
- 横向きの力(曲げ・ねじれ) — 立てかけて倒す、荷物に挟む、扉に当てる。竹弓でもグラス・カーボン弓でも、いちばん多い破損の原因です。
- 熱 — 夏の車内。ダッシュボードの上や、閉め切った車の後部は危険です。特に接着で成形されている弓は、熱で形が変わることがあります。
- 急な乾湿の変化 — 雨に濡れたまま放置する、濡れたものと一緒に袋に入れる。
この3つを避けるのが、運び方のすべてと言っていいくらいです。弓の長さの基本は並寸と伸寸のちがいにまとめています。
弓袋を選ぶときに見る3つの寸法
弓袋は「弓道用」とあれば何でも合う、というものではありません。次の3つを実測してから選びます。
| 見る寸法 | 何のためか | 目安の考え方 | |—|—|—| | 袋の長さ | 弓が全部入るか | 自分の弓の長さ+余裕。並寸と伸寸で必要な長さが違う | | 入る本数 | 弓を何本入れるか | 1本用・2本用がある。将来2本持つ予定なら2本用 | | 矢筒が入るか | 一緒に運べるか | 弓袋と矢筒が一体の型もある |
買う前に、自分の弓の長さを実際に測ってください。「並寸のはず」と思っていたら伸寸だった、という取り違えは起こります。
そのうえで、肩掛けのベルトがあるかを見ます。両手が空くかどうかで、移動の安全性が変わります。片手で弓を持ったまま階段を降りるのは、想像以上に危ない場面です。
電車・バスで運ぶ
結論から言えば、運べます。部活・道場通いで実際に多くの人がそうしています。ただし配慮は要ります。
- 必ず袋に入れる。むき出しで持ち込まない。周囲の人に当たったときに、相手も弓も守れません。
- 縦に持つ。横に構えると、車内では確実に人に当たります。弓は自分の体に沿わせて、床に近い位置で持ちます。
- 車両の端・扉の脇に立つ。座席の間に立つと、頭上の吊り革や網棚に当たります。
- 混雑時間を外す。朝夕のラッシュは、弓にとっても周囲にとっても厳しい時間帯です。可能なら1本ずらします。
- 改札・階段で先端を意識する。事故の多くは、自分が見ていない上端側で起きます。
先端にキャップ状の保護が付いた袋だと、扉や天井に当たったときの傷が減ります。
車で運ぶ
車は楽ですが、車内で一番弓を壊しやすいのも事実です。
- 後部座席を倒して、斜めに寝かせて置く。立てかけない。
- 上に物を置かない。荷物の下敷きが最も多い破損原因です。
- 夏は車内に置きっぱなしにしない。射場に着いたら、まず弓を降ろします。「あとで取りに行く」が一番危ないです。
- 暖房・冷房の吹き出し口の前に置かない。局所的に乾いたり温まったりします。
軽自動車やコンパクトカーでは、助手席を前に出して斜めに積む形になります。実際に一度積んでみて、無理なく入る角度を確かめてから遠征の予定を立てると安心です。
徒歩・自転車
- 徒歩 — 肩掛けにして、体の斜め後ろに来るように背負います。前に出すと、曲がり角で見えていない先端が当たります。
- 自転車 — 推奨できません。背負ったまま乗ると、風で振られて重心が崩れます。どうしてもという場合は距離を短く、速度を落として。
遠征・宿泊を伴う移動
- 新幹線 — 座席後方のスペースや、デッキ寄りの車両端に置かせてもらえる場合があります。車掌さんに一声かけるのが確実です。
- 飛行機 — 持ち込みではなく預け入れになります。サイズ・取り扱いは航空会社ごとに規定が異なり、変更もあるため、必ず事前に各社へ確認してください。ハードケースを求められることがあります。
- 宿での保管 — 立てかけて置くと倒れます。寝かせて、人が踏まない場所に。濡れた雨具と一緒にしないこと。
※航空会社の規定・料金は本記事では扱いません。予約前に各社の公式ページで必ず確認してください。
弦は一緒に運ぶのか
張ったまま運ぶか、外して運ぶかは、道場や指導者の方針で分かれます。まず自分の道場の指導に従ってください。
一般論として言えるのは、
- 張ったまま長時間の高温下に置かない
- 外して運ぶなら、弦は弦巻に。袋の中で絡ませない
- 予備の弦を1本、袋に入れておくと遠征先で助かります
弦そのものの寿命の目安は弦の寿命と交換の目安に、選び方は弦の選び方にまとめています。
袋の中に一緒に入れておくと助かるもの
弓袋(または一緒に持つ道具袋)に常備しておくと、忘れ物で困らなくなるものです。
- 予備の弦
- ぎり粉
- 中仕掛けの補修材(麻・接着剤)
- 小さなタオル(雨に濡れたときに拭く)
- 絆創膏
一式で何を揃えるかは弓道具一式の費用を、これから始める方は大人から弓道を始めるにはを参考にしてください。
よくある質問
Q. 弓袋がありません。当面どうすればいいですか。 A. 長い布や毛布で包み、先端を保護して運んでください。ただし、これは当座の対応です。移動が習慣になるなら、専用の袋を用意するほうが結果的に弓を守ります。取扱店や指導者に相談してください。
Q. 雨の日はどうしますか。 A. 袋の上からさらに雨具で覆うか、移動を見送ります。濡れたら、帰宅後すぐに袋から出して、風通しのよい日陰で乾かします。袋に入れたままにしないこと。
Q. 弓と一緒に矢も運びたい。 A. 矢は矢筒に入れます。弓袋に直接入れると、羽が潰れます。矢の扱いは矢の選び方も併せてご覧ください。
Q. 電車で「危ないもの」と見られないか心配です。 A. 袋に入れて縦に持ち、周囲に当てなければ問題ありません。むき出しにしないことと、混雑を避けることで、ほとんどの不安は解消します。
まとめ
- 弓が傷むのは曲げ・熱・急な乾湿。運び方はこの3つを避けるだけ
- 弓袋は長さ・入る本数・矢筒の可否を実測してから選ぶ。肩掛けがあるものを
- 電車は袋に入れて縦に、体に沿わせて、車両の端で
- 車は寝かせて、上に物を置かず、夏は置きっぱなしにしない
- 飛行機は預け入れ。規定は航空会社ごとに違うので事前確認
道具の扱いに慣れると、移動そのものが苦にならなくなります。袴のたたみ方など、持ち運びに関わる基本は袴のたたみ方にもまとめています。
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弓袋は、本記事の3つの寸法(弓の長さ・太さ・持ち手)が合っていることが第一条件です。
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