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千歩堂 KYUDO
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替え弦は何本持っておくのか|弦巻が要る人・要らない人と、弦が切れた日に稽古を止めないための備え

弓道具の基礎知識

弦が切れるのは、たいてい何の前触れもない日です。

前の射までは普通に引けていて、離れの音が一度だけ違い、見ると弦が垂れている。そこから先、その日の稽古を続けられるかどうかは、道具袋の中に何が入っているかだけで決まります。

弦そのものをどう選ぶか、いつ張り替えるかは別の話として整理してあります。ここで扱うのは、「何本を、どういう状態で、どこに入れて持ち歩くか」という、買い足しの側の話です。

結論から

普段の稽古なら、張ってある弦のほかに「すぐ使える替え弦1本」と「予備1本」。合わせて手元に2本を切らさないのが、いちばん無理のない形です。

試合や審査の日は、これにもう1本足して3本。理由は後で書きますが、当日は「切れた」だけでなく「張り替えに手間取った」も起こりうるからです。

弦巻は、替え弦を1本以上持ち歩く人には要ります。ただし「弦巻という道具を必ず買え」という意味ではありません。何のためにあるのかを知ってから決めれば十分です。

なぜ「本数」の話が要るのか

弦は消耗品のなかでも、減り方が見えにくいものです。

握り革はすり減るのが見えます。ギリ粉は残量が見えます。弦は、見た目がほとんど変わらないまま、ある日切れます。中仕掛けのあたりが毛羽立ってきたら替えどき、という目安はありますが、それを見逃した日に切れます。

そして厄介なのは、切れたあとにやることが「弦を張る」だけでは終わらないことです。

切れた弦を替えるとき、実際に必要になるもの

  • 替えの弦そのもの
  • その弦に作ってある中仕掛け(無ければ、その場で作る)
  • 中仕掛けを作るための麻や木綿の糸(無ければ作れない)
  • 弦を張るための場所と、少しの時間

つまり、「替え弦を持っている」と「すぐ引ける状態の替え弦を持っている」は別です。ここを分けて考えないと、袋の中に弦は入っているのに、その日は引けないということが起きます。

中仕掛けの作り方そのものは 中仕掛けの作り方|太さの目安・弦輪・崩れたときの直し方 にまとめています。

何本持つか:3つの状況で分けて考える

① 普段の稽古

手元に2本(すぐ使える替え弦1本+予備1本)。

すぐ使える1本は、弦輪を作り、中仕掛けまで済ませて、弦巻に巻いた状態にしておきます。これがあれば、切れても数分で稽古に戻れます。

予備の1本は、袋のまま入れておいて構いません。「すぐ使える1本を使ってしまった日の、次の1本」という位置づけです。使ったら、家でこの予備に中仕掛けを作って、すぐ使える側に格上げします。

この「使ったら補充する」を習慣にしておくと、買い足しのタイミングを考えなくて済みます。

② 試合・審査の日

手元に3本。

普段より1本多いのは、切れる回数が増えるからではありません。当日は、いつもの場所でいつもの道具を使って張り替えるわけではないからです。

  • 控えの場所が狭く、弦を張る作業がしにくい
  • 順番が迫っていて、落ち着いて中仕掛けを作る時間がない
  • 張ってみたら弦輪の大きさが合わず、やり直しになった

こうしたときに、「すぐ使える状態の弦」が2本あるかどうかで、間に合うかどうかが変わります。

③ 学生・部活動の場合

部で共用の替え弦を持っていることがあります。ただし、共用のものは弓力や弓の長さに合っているとは限りません。

自分の弓に合う号数を、自分で1本は持っておくほうが確実です。部の備品と自分の道具の線引きについては 学生弓道で、部の道具と自分の道具はどこで分かれるのか|買う前に顧問へ聞く5つ を参照してください。

弦巻は要るのか

弦巻(つるまき)は、替え弦を輪の形のまま、折らずに持ち歩くための道具です。

弦は、きつく折り曲げると、その折り目がそのまま弱点になります。袋にそのまま押し込んで持ち歩くと、癖がついたり、ほかの道具に引っかかって傷んだりします。弦巻は、それを防ぐためにあります。

要る人

  • 替え弦を1本以上、常に持ち歩く人(=ほとんどの人)
  • 中仕掛けまで作った弦を持ち歩く人。中仕掛けの部分は形が崩れやすく、押し込むと作り直しになります
  • 試合・審査に出る人。取り出してすぐ張れる状態を保てます

急いで買わなくてよい人

  • 弓を道場に置いていて、替え弦も道場に置いたままにしている人
  • 予備の弦を袋に入れたまましか持たない人(=中仕掛けを作っていない人)

この場合、まず優先したいのは弦巻より「すぐ使える替え弦を1本作ること」です。順番が逆になると、入れ物だけあって中身が無い状態になります。

選ぶときに見るところ

見るところ何が変わるか
大きさ(直径)自分の弓の長さに合う弦が、無理なく巻けるか。並寸と伸寸で弦の長さが違います
素材木・合成樹脂・革などがあります。落としたときに割れるか、欠けるかが変わります
巻いた弦の留め方ひもやゴムで留める形が一般的です。留めが緩いと、袋の中でほどけます
収める場所腰に提げるか、道具袋に入れるか。提げるなら金具やひもの付き方を見ます

並寸・伸寸の違いは 弓の「並寸」と「伸寸」の違い|身長・矢尺での見分け方 にあります。弦の長さは弓の長さに合わせて選ぶものなので、ここがずれていると替え弦そのものが使えません。

替え弦は「買ったまま」では使えない

ここがいちばん取り違えられるところです。

買ってきた弦は、そのままでは弓に張れません。少なくとも、

1. 弦輪を作る(本弭側と末弭側で作り方が違います) 2. 中仕掛けを作る(矢の筈がはまる部分)

の2つが要ります。弦輪については 弦輪の作り方|本弭・末弭側の違いとほどけない結び を参照してください。

この2つを、家で落ち着いているときに済ませておく。それが「すぐ使える替え弦」です。切れたその場で作ろうとすると、焦っている上に道具も足りず、うまくいきません。

先に作っておくと起きる、ひとつの注意

中仕掛けを先に作った弦は、時間が経つと少し締まります。しばらく使わないまま置いた替え弦を張ったとき、筈のはまり具合が、作ったときより固いことがあります。

張ったら、必ず一度、矢の筈をはめてみてから引いてください。固すぎる・緩すぎるようなら、その場で少し直します。切れた日にいきなり本番の射に入らない、というだけのことですが、ここを飛ばすと筈や弦を傷めます。

いつ買い足すか

「切れたら買う」ではなく、「手元が2本を切ったら買う」にしておきます。

弦は、注文してから手元に届くまで日があくことがあります。切れてから注文すると、届くまでの稽古が1本勝負になります。その状態でもう1本切れると、その週は引けません。

買い足しの合図

  • 手元の替え弦が1本になった……このときに注文する
  • すぐ使える1本を、実際に使った……使った時点で補充を決める
  • 試合・審査の予定が決まった……当日までに3本の形を作る
  • 弓力を上げた/弓を替えた……号数が合わなくなっている可能性があります。手持ちの替え弦が使えるか先に確かめてください

弓を替えたときに何から見直すかは 一式そろえたあと、何から買い替えるか|射に効く順番と、効かない順番 に整理しています。

まとめて買うか、都度買うか

弦はまとめて買っても劣化が急に進むものではないため、同じ号数を複数まとめる人は多くいます。

ただし、弓力を上げる予定がある人は、まとめ買いに注意してください。号数が変わると、手元の弦が使えなくなります。弓力を上げるかどうかが決まるまでは、1〜2本ずつにしておくほうが無駄が出ません。

どこで買うかについては 弓具はどこで買うのがいいのか|店・通販・部の一括注文の使い分け を参照してください。消耗品全体でどれくらいかかるかは 弓道は、道具を揃えたあとにいくらかかるのか|弦・中仕掛け・ギリ粉と、消耗の周期 にまとめています。

道具袋に入れておくもの(弦まわりだけ)

替え弦を持つなら、これだけは一緒に入れておくと、切れた日に困りません。

  • すぐ使える替え弦(弦輪・中仕掛けまで済ませたもの)を巻いた弦巻
  • 予備の弦(袋のまま)
  • 中仕掛け用の糸……その場で作り直すことになったときに要ります
  • ギリ粉……弦の話ではありませんが、切れた弦を外して張り直したあと、手が滑って続けられないということが起きます

ギリ粉の扱いは ギリ粉の付け方と種類|つけすぎ・足りないとどうなる? にあります。

よくある質問

Q. 替え弦は、張ってある弦と同じ号数でないといけませんか。

同じ弓に張るなら、同じ号数で揃えておくほうが扱いやすくなります。号数が違うと弦の太さが変わり、中仕掛けの太さも変える必要が出ます。切れたその場で号数の違う弦に替えると、筈のはまり具合が変わって、当日の感覚が狂います。替えは「いつもと同じもの」を用意しておくのが基本です。

Q. 弦巻がないので、替え弦を輪のまま輪ゴムで留めています。

短期間なら困りませんが、長く置くと輪ゴムの当たった部分が傷むことがあります。また、道具袋の中でほかの道具に押されると、中仕掛けの形が崩れます。中仕掛けまで作った弦を持ち歩くようになったら、そのときが弦巻を買うタイミングだと考えてください。

Q. 古い弦は、切れる前に捨てたほうがいいですか。

張り替えた弦をすぐ捨てる必要はありません。ただし、「使える替え弦」として数に入れないでください。一度使い込んだ弦を替えとして持っていると、いざというときにまた切れます。練習用・巻藁用として分けて置き、正式な替えの本数には数えないのが安全です。

Q. 中仕掛けを作った替え弦は、どれくらい置いておけますか。

置いておくこと自体は問題になりにくい一方で、時間が経つと筈のはまり具合が変わることがあります。期間で決めるより、張ったときに毎回、筈をはめて確かめるほうが確実です。固い・緩いと感じたら、その場で直してから引いてください。

まとめ

  • 普段は手元に2本、試合・審査の日は3本。このうち1本は「弦輪・中仕掛けまで済ませた、すぐ使える状態」にしておく
  • 弦巻は、中仕掛けまで作った弦を持ち歩くようになったら要る道具。入れ物より先に、中身を作る
  • 買い足しは「切れたら」ではなく「手元が2本を切ったら」。届くまでの日数を見込んでおく
  • 弓力を上げる予定があるなら、まとめ買いは慎重に。号数が変わると手持ちが使えなくなる

弦が切れること自体は、道具が悪いのでも、射が悪いのでもありません。消耗品なので、いつか切れます。決めておけるのは、切れた日にどうするかだけです。